春を知るには少々動物的ではあるが、においと音である。まず雪が溶けだすときのにおい。これはうそではない。ちゃんとにおいがするはずである。かすかに煙ったい感じ…。信じられぬ人は、冷蔵庫の氷に鼻を押しつけてみるとよい。もっとも、その感じは、長い冬を暮らした人でなければわからぬがもしれないが…。
 
 
 氷が溶けるときには音も出る。これは風に暖かさが感じられるとき、カザッ、コソッと小さな音がする。氷の結晶が崩れ、ぶつかるときに音が出るのてあろうか。
 
- 崩れる: [自]破碎;崩溃,倒塌
 - ぶつかる: [自]撞,碰;冲突
 
 
 
 こんなににおいや音が敏感になるほど、北国の人々は春を待ちこがれでいるのだ。
 
 
 三月下旬、毛蟹漁が終わるころ、残雪をけ破っていち早く姿を見せるのは黄色い福寿草で、まさに春のきざしといったところ。アイヌ民族は、福寿草を「アイウの花」と呼び、やばり春の訪れを知ったという。福寿草が咲きだすと、川の氷が溶け、イトウという魚が川をのぼってくるからである。
 
- 蹴破る: 踢破,击破,打散
 - きざし: 兆头,征兆
 - 訪れる: [自]访问;来临
 - のぼる: [自]攀登,登上
 
 
 
 春告げ魚に鰊があったが、今は昔。魚屋の店先に並ぶ輸入の冷凍鰊では、何の詩情も浮かばない。
 
- 鰊: type of edible fish common to the North Atlantic
 
 
 
 福寿草の次は、もう百花繚乱。あらゆる春の草花がいっぺんに咲く。辛夷、梅、桜、桃などが同居しているのが、岬の東にある庶野という村。一応、桜の名所ということになっているが、こうなると、何の名所かよくわからない。
 
- あらゆる: 所有,一切
 - 一応: 一次,一下,一遍,姑且
 - 名所: 名胜
 
 
 
 五月の初旬、晴れた日には毎日でも花見客がジンギス汗鍋を囲んで、にぎやかに歌い、踊りまくる。これをやらぬと、どうも春らしくない。地元の人々にとって、花見は大切な春の行事のひとつである。
 
 
 羊の肉と野菜を鉄板で焼いて、タレを付けて食べるジャンギス汗鍋だが、少々特有のにおいがする。もっとも、これも春の香りの仲間でもある。
 
 
春駒が生まれ、子牛が誕生する。遅い春がようやく終わる、六月になると、牧場では 牧草の刈り取りが一斉に始まる。しかし、これは、もう次の冬への準備なのである。
 
- ようやく: [副]终于,总算
 - 刈り取り: 收割,铲除,除掉
 
 
 
表現文型
① 名词+がする。表示某种感觉的产生。这里的名词是表示气味、口味、声音、身体感觉的名词,表示人的感觉。
- まず雪が溶け出すときの匂い。これはうそではない。ちゃんとにおいがするはずである。/ 首先是雪融化时的气味。这不是在撒谎,确实会发出气味的。
 - これは風に暖かさが感じられる時、カサッ、コソッと小さな音がする。/ 在感觉到暖风来临时,就会发出小小的冰裂的声音。
 - 彼とうまくやっていけるような気がする。/ 我感觉可以和他顺利地合作下去。
 
② 名詞+らしい。表示具有典型的性质。
后缀「らしい」接在名词后构成形容词,表示事物的典型性质,即充分具备了前边的名词所应有的特征、形象或气质等。类似于汉语中“典型的……,像……的样子”。
- これをやらぬと、どうも春らしくない。/ 如果不做这样的事,就感觉不到春天已经来临。
 - そんなことをいうのは君らしくないね。/ 说那样的话,不像是你一贯的作风。
 - そんなことをいうのはいかにも彼女らしい。/说那样的话,太像是她了。
 
与推量助动词「らしい」不同。名词接后缀 「らしい」 构成的形容词可以派生成名词,变为「らしさ」的形式。